私はザフィーナ 今はクラウディオの実家(？)に来ている シリウス聖堂から少し離れた所だがイタリア内にある、少し都会の喧騒から離れた場所 そこのお屋敷の探検をしている 好き勝手歩いていいらしく、とても楽しい探検ができた 古き良きバロック調の三階建ての建物 屋敷中央に聳える時計はこの街のシンボルのように聳え立つ この屋敷の前に建つ銀行よりも大きい…この町で1、2を争う大きさだろう ロビーを抜けて中庭に出ると、広々とした空間が広がっており、現在使っていないであろうプールや小さなブランコが微風に揺れていた まるで一つの公園だな…と眺めているとクラウディオは少し照れくさそうにやってきた 恐らく小さい頃あのブランコで遊んでいたのだろう 彼は帰省時のお土産として家族+私の分のケーキを買っていた、それを冷蔵庫に入れてきていた 「父が今用事があるようだから…帰ってきたらコーヒーを淹れて食べよう」と微笑む 「あれ、あのブランコ、貴方どのくらい使ってたの？」 「…恥ずかしいから聞かないでくれ！」 初々しい反応が愛おしい、後で絶対お母様に聞いてやろう！ 少し話しながら中庭を歩いていると…明らかに不自然な線路が見えた 私もクラウディオも警戒体制に入った 「貴方の実家に悪霊？」 「許せないことですね…やはり定期的に帰らねばいけませんね」 彼は炎を纏い、私はアザゼルを起動して近寄る 線路はずっと開かない踏切だった その先に悪霊と思われる霊体が並んでいたが…自転車に乗っていたり買い物袋を下げていたり…若干日本風の霊体だった(多分イタリア風の幽霊を知らないせい) 「…ここから先はうちの敷地外ですね…」 「貴方の家の中って訳では無かったのね…」 「はい、ですが…この踏切が開けば、彼らは来るでしょう…何か対策はしなければなりませんね…」 よく見れば手前に小さな柵、そして道路、向かいに住宅街である 木々とかで囲っていないんだ…セキュリティ甘過ぎない…？とも思ったが… 地元じゃ超有名な建物だろうから…わざわざここに潜入する勇気ある愚者などいないのだろう… 彼が線路に小細工をしている間に周りを見渡していると…少しだけ違和感を感じる小屋を見つける 「…クラウディオ…あれは…？」 「ん？…んん？…あれは…地下栽培に続く階段がある場所ですね…向かってみましょうか」 「地下栽培…何作ってたの？」 「さぁ…祖母が扱っていた場所なので私は知らないんですよ…」 「貴方がわからない所ってあるのね…」 「広いですからね、ここ」 …貴方が認識していない場所だから結界が甘くて霊がいるんじゃないの…？と口に出しそうになったが、それらを一気に閉ざす程強烈な不快感が扉を開けた瞬間に襲いかかってくる しかし敵意は無い むしろクラウディオの戦闘体制からの…彼の殺意の方が大きい 地下に続く階段は暗い、電気がない以上に暗く、重く、ドス黒い。 2人して顔を見合わせ、頷き…中に入る 地下のドアを開く前から来る異臭 (俺自身が嗅いだことないからわからない想像の物だけど) 獣くささ、死骸、腐肉の溜まった油臭さを血と土で混ぜたような…鼻の奥に刺さる重い匂い しかしこれは物理的な香りではない 霊臭と呼ばれる物だ 「…一気に行きましょう」 「ええ、準備はできてるわ」 彼の炎で照らされたドアノブを見つめ、拳に力を込める ドアノブを回し、勢いよくドアを蹴り飛ばして突入する 爪を立てて盾にして、中に踏み込む！ …匂いとは裏腹にその場所には何も無かった ただただ広がるコンクリートの空間に…ポツンと一つ、肉塊のような霊体がいた それは少し物質を得た悪魔に近い存在になっていたが、それから発せられるのは深い寂しさと、悲しさと…驚きだった 「やはり悪魔でしたか…大事になる前に始末しましょう」 魔法陣を展開し矢を番える彼 その姿を見て…なんだろう、懐かしさに似た愛おしさ、悲しさを感じた 「ちょっと待って！悪魔だからっていきなり殺そうとするのが貴方の短所よ！」 右手で彼の照準をずらす、左手だと痛いからね 「何を…！う…相手は悪魔なんですよ？！」 図星だったのか少し狼狽えたが、その手は離さなかった、流石最強祓魔師…だが今はそれは必要ない 「その悪魔を見て、何かおかしいの」 「おかしい…ですか…」 渋々矢を下ろす…ようやく見た様で彼も違和感に気づいた様だ そう、私が悪魔に背を向けているのに、悪魔は襲ってこないのだ それどころか…生暖かく見守っているのだ 「…私が話しかけてみる…もし襲われたら遠慮なく撃ち抜いて」 「…えぇ、わかりました」 少し落ち着かせてから、振り返り悪魔を見る 近寄っても何も動かない 周りに何かいる訳でもない しゃがんで目線を合わせてみる 緑色が混じった青みがかかった目をしている とてもとても優しい目だ 「…貴方はどうしてここにいるの？」 そっと話しかけると悪魔は動く クラウディオが狙っているが…悪魔の動きはモタモタとしている 何か伝えたい様だが…声もなく、ただグネグネと動いている… 「…貴方は…元人間？」 そう聞くと目を見開き、頷く様なそぶりを見せる クラウディオは矢を番えたままだが腕を下ろした状態で近寄り、隣に立つ 「…人か、と聞いた理由は？」 「人だったら…私が視れるの」 アザゼルを引っ込めて水晶玉を取り出す 未来視が出来るという事は過去も視れる そもそも霊視はその人の過去を見て、今の体調や周囲を見て、それから未来の予測を引っ張ってくるという内容なのだから 「貴方が貴方だとわかる1番の記憶を思い出して、それを私が視るから…それで貴方が何者なのかを判断する」 悪魔はゆっくり頷き、目を瞑る 私は水晶玉に手を当て力を込める 力を込めるというよりかは…呼吸を整え、精神を集中し、一本の線にする その線をずらして周波を合わせる ラジオのチャンネルを探す様に、少しずつ変えていく 音が聞こえ始めたら目を瞑る 波の音、海辺…潮の香り、日焼け止め？化粧品の香り… 情報がカチリと合わさる 周波が見つかった 一気に広がる青い青い空と海 ここは広く美しいビーチ 私の髪色は栗色のウェーブのかかったロングヘアー 水着はピンクと白のマーブルのビキニ ビーチパラソルは…逆光で見えないけど多分黄色と赤 ふと頬に冷たいものが当たる 驚いた声は可愛らしい 目線をずらして原因を探る… 私ザフィーナはそれを見て思いっきり笑ってしまった 冷たい瓶のドリンクを持ってきた人は…クラウディオによく似た男性だったのだ 急な恥ずかしさと、その映像の答えに耐えきれず霊視を停止 大爆笑してクラウディオの足にもたれかかる 終始疑問符を浮かべてるクラウディオ ずっと微笑んでる悪魔 そうだろう、彼女はクラウディオの祖母だ！ 先程ロビーを歩いてる時に飾ってあった絵画に、その彼は写っていた(はず) 「んふふ…貴方ってお祖父様そっくりなのね…！」 「はい？？？な…何を見たのか説明してもらってもいいですか…？」 笑いを抑えてから…今見た全てを説明した 「…あぁーーーー！！ちょっとだけ違いますね！」 話を聞いて全て理解したクラウディオは、恥ずかしそうに説明する 「正確に言えば彼女は…私の祖父の弟の奥さん…つまり大叔母さんですね！ 正確な血の繋がりとは違いますが…確かにセラフィーノ家の者です！ そうか…叔祖父は力が無かったので…大叔母さんが悪魔化してもおかしくはないのか…」 「…お祖父様と弟さんは似てたのね！」 「らしいですね、叔祖父の家族とはほとんど会えてなかったので…申し訳無いのですが知らないのです…」 つまりこの悪魔…彼の大叔母さんは旦那によく似た孫と、孫の連れてきた女性を見て微笑んでいるのだ…恥ずかしい！ …しかし一つの疑問が生じる 「ここってお婆様の地下栽培場なのよね？どうして大叔母様が悪魔化してこの場所に…？」 恥ずかしそうにしていたクラウディオも表情を固める、大叔母様は少し俯く 「…色々確認する必要がありそうですね…貴方はここから出られそうですか？…難しいですか…では色々探してきますね」 「私達しばらくここに滞在してますから…ご安心してくださいね！」 そう言って大叔母様を落ち着かせてその場に置き、私達は一度外に出た 外は爽やかな青空が広がり、少し冷たい秋風が全身を浄化してくれる様だった 「…随分大変な事になってるみたいね」 「ですね、少し香りを落としてから…親に聞いてきましょう…」 クラウディオに浄化してもらい、ロビーに戻る 確かに飾られていた絵画は堅苦しい顔と髪型をしている 霊視で見た彼はもっとオシャレに自由そうだった 「…ふふ、どっちに似ています？」 「…昔はこの堅苦しいお祖父様に、今のその間抜けな笑顔は叔祖父さんに似ているわ」 「それはいい事ですね！」 彼の微笑みはとても眩しかった 霊視の時の…明らかに恋心の甘酸っぱい(Sweet and sour)感情がまだ残っている様で、とても恥かしくなった ってとこで目が覚めた！！！！ とても長く素敵な話だけど！！悪魔ばあちゃんどうなったのーーー！！！教えてーーー！！！！(((